ミュージックジャンキー秘密のプレイリスト

3度の飯より音楽大好き(は言い過ぎた・・・。)お父さんの音楽レビュー。

ねずみ浄土/GRAPEVINE 音楽レビュー其の120

フリーランスライターのだいすけです。
本日も元気に音楽レビューをしていきましょう。

 

本日レビューするのは日本のロックバンドGRAPEVINE「ねずみ浄土」です。

 

93年に結成され第1線で活動するベテランロックバンド

GRAPEVINEは93年結成(今年で結成28年)と非常に長いキャリアを持つ、超ベテランバンドです。

 

アラフォーの私が11歳の頃から活動してるのだと思うと、改めて驚きます。

 

ベテランロックバンドという表現は月並みですが、これだけ長きにわたり音楽シーンで活躍し続けるのは本当に難しいだろうと容易に推測できるので、あえて「ベテラン」を強調させてもらってます。

 

ミスチルやサザンみたいにスタジアム級のバンドは例外として、30年、しかもコンスタントに活動を続けているGRAPEVINEのようなバンドというのはほんのひと握りでしょう。

 

彼らのデビュー当時の楽曲は、幅広い層を意識したせいかパッと華やか楽曲もありました。
スマッシュヒットを記録した初期の「スロウ」や「光について」はサビで盛り上がるタイプの曲で、当時10代の私にも刺さったのか、よく聴いていた記憶があります。


しかし、活動が進むにつれ彼らのルーツであるブラックミュージック色が濃くなり、当時の自分にとっては「地味な印象」を受ける楽曲が増えた様に感じました。

 

それもあってか、彼らの音楽を聴く機会が自然と無くなっていたのです。


ところが2年位前に、彼らの音楽を無性に聴きたくなるタイミングがありました。
たまたま雑誌で彼らの記事を読んだのがきっかけだったと思います。
高品質な楽曲を提供してくれていた彼らが現在、どんな音楽を鳴らしているのか知りたくなったためです。

 

手に取ったアルバムは2016年に発表された「BABEL ,BABEL」という作品でした。
ポストロック*1に近いアプローチを積極的に取り入れた作品で、私の趣味趣向にドンピシャの作品だったので、以来彼らの音楽にまた触れる様になりました。 

 

ねずみ浄土聴いてみよう

今回紹介する「ねずみ浄土」は、21年5月26日に発売された彼らの17thアルバム「新しい果実」の先行シングルです。

 

ねずみ浄土

youtu.be

 

音と音の隙間しっかり取ったアレンジになっていて、余裕すら感じるソウル/ブルースロックに仕上がっています。
25年以上もの間、ストイックに新しい挑戦を重ねつつ進み続けた、ロックバンドが奏でる音楽の味わい深さは極上です。

 

MVではホテルの客室係として手際よく働きながらも、耳にイヤホンをかけ、音楽に身を任せ随所でサボる女性が描かれています。

 

「うまーくサボるなあ」と感心感心。


ゆるゆると遊びながら働く姿を「罪」と感じるか、「豊かな人生を送るための働き方のヒント」と感じるかは人によって分かれそうなところですが、私は後者でとらえました。(仕事はちゃんとやってるしね、彼女)

 

ねずみ浄土って何?

ねずみ浄土は日本の昔話です。

山へ柴刈りに行ったじいさんが、落としたそばもちを追いかけていくと、もちは小さな穴に入ってしまいました。そこに現れたネズミは、お礼にご馳走するからといって、じいさんをしっぽにつかまらせて、穴の中へと連れていき、もちや黄金をどっさりおみやげに持たせてくれました。それを知って隣のめくされじいさんは、まねをしますが……。

引用:「福音館書店」ねずみじょうど| https://www.fukuinkan.co.jp/book/?id=165

「おむすびころりんライク」な良い爺、悪爺が出てくるタイプの話ですね。
私は子供の頃から、結構こういう話で道徳を説かれることに抵抗があったことをこの曲を聴いていて思い出しました。

 

悪爺ってめちゃくちゃ「サイテーなやつ」として描かれているけど、良い爺がいい思いをしているのをみて羨ましく思うのって人として当たり前だよなあ・・なんて思ってきたのです。
良い爺の真似をしたくなるのも、実に人間らしい。
それなのに、悪爺が受ける仕打ちと言ったらひどいものです。(ねずみ浄土では生き埋め)


煩悩に苛まれ、欲求に駆られて行動するのを「悪」と決めつけることには、今でも抵抗があります。

 

GRAPEVINE「ねずみ浄土」の歌詞の中では、ねずみ浄土のストーリーと並行して、アダムとイブの逸話(禁断の果実を食べて楽園を追放される話)のエピソードも差し込まれているのです。

 

MVのストーリーやタイトル、歌詞の内容からも「人間が本来もつ嵯峨(さが)」や「罪」をテーマにした楽曲であるのかなと推測しています。

 

「罪を犯すことが人間らしい」と鼻で笑うかの様な少しひねくれたノリに、長年「良い爺・悪爺系童話」にもやっとした感情抱えてきた自分としては、妙にスッキリした感覚を覚えました。

まとめ


結成30年を前にして、ますます脂の乗りまくった、大人のロックを展開するGRAPEVINE
「ねずみ浄土」が収録されている、最新アルバム「新しい果実」は力が適度にぬけた味わい深い作品になっていて、非常におすすめですよ。では!

*1:ポストロック・・・既存のロックの型に当てはまらない実験性の強い音楽、全く新しいアイデアや、他ジャンルに見られる音楽の引用など形は多岐にわたる 代表的なアーティスト:radiohead